大分地方裁判所 昭和26年(ワ)154号 判決
原告 亀井俊仁 外五名
被告 杉山八千代 外二名
一、主 文
大分家庭裁判所臼杵支部が同庁昭和二十六年(家)第一一七号遺言書検認事件につき昭和二十六年四月二十五日検認した遺言者亡亀井惣平の自筆証書による遺言は無効であることを確認する。
訴訟費用は被告等の負担とする。
二、事 実
原告等訴訟代理人は主文同旨の判決を求めその請求の原因として「大分県臼杵市大字臼杵六百三番地訴外亡亀井惣平は昭和二十六年三月十九日、同市大字臼杵二ノ百七番地の四百五十五で死亡したが、当時同訴外人には配偶者直系卑族直系尊族兄弟姉妹いずれもなく、同訴外人の弟亡寛一の子である原告等が代襲により共同相続人となつたものである。然るに被告飯沼寛三は大分家庭裁判所臼杵支部に前記惣平の遺言書として別紙<省略>記載のような遺言書の検認を申立て、同裁判所は同庁昭和二十六年(家)第一一七号遺言書検認事件としてこれを受理した上、同年四月二十五日これを検認した。併し右遺言書はいわゆる自筆証書による遺言書の形式を有するものであるが、日附の自書がないので他の点はともかくこの一事によつて既に無効であること明かである。よつて原告等は右遺言による受遺者と自称する被告飯沼寛三、同杉山八千代並に右遺言執行者たる被告山本真平を相手取り右遺言の無効なることの確認を求めるため本訴に及んだとのべた。<立証省略>
被告寛三、八千代両名訴訟代理人並に被告山本真平は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」旨の判決を求め答弁として「原告主張の請求原因たる事実の内、訴外亀井惣平の死亡に関する事実、同訴外人及び原告等の各身分並相続に関する事実、遺言書の検認に関する事実、右遺言書が自筆証書の形式による遺言である事実はこれを認めるが、日附の自書がないということは否認する。なるほど右遺言書本文には日附の記載がないがこれと一体をなす封筒には訴外亡惣平の自書で「26、3、19日」なる記載があるから、右遺言書は日附の記載あるものであつて原告の請求は失当である」とのべた。<立証省略>
三、理 由
訴外亡亀井惣平が原告主張の日時に死亡したこと及び大分家庭裁判所臼杵支部が同庁昭和二十六年(家)第一一七号遺言書検認事件において、昭和二十六年四月二十五日右惣平の遺言書として自筆証書の形式による別紙目録記載のような内容の遺言書を検認したことは当事者間に争のないところである。
而していずれも成立に争のない乙第一号証の一、二及び甲第五号証によれば右遺言の全文及び遺言者惣平の氏名並にこれを納めてある封筒記載の各文字はすべて亡惣平の自書であるが遺言全文及び遺言者氏名の記載された紙片には全く日附の記載を欠き前記封筒にだけ「26、3、19日」なる日附の記載があるに過ぎないことが認められる。
そこで右封筒記載の日附はこれを遺言書の日附と認め得るかどうかの点を考えるに凡そ自筆遺言書の日附は必ずしも遺言全文及び氏名を記載した紙片に記載されることは要しないけれども、少くとも契印その他の方法によりそれ自体右紙片と一体をなすものと認めるに足りる部分に記載されていることを要すると解するのが相当であるところ、本件の場合は一般に内容物とは別個の存在である封筒にのみ日附の記載があり、而も検認当時右封筒は開披せられていたこと当事者間に争のないところであつて、右封筒が前記紙片と一体をなすものと認めるに足りる形跡は全くないから、右封筒記載の日附を以て遺言書の日附と解することは到底許されない。
然らば、右遺言書による遺言は日附の記載を欠く点において無効であるといわなければならず、訴外亡惣平の共同相続人たること当事者間に争のない原告等において亡惣平の受遺者と主張する被告寛三、同八千代並に右遺言執行者である被告真平(これ等の事実は各被告等において明に争わない)を相手どり、右遺言の無効なることにつき即時確定を求める利益があるものと認めるから、原告の本訴請求は正当として認容し、訴訟費用につき民事訴訟法第八十九条、第九十三条を適用し主文の通り判決する。
(裁判官 川添利起)